2026/1/17 05:17

本の紹介

江戸川乱歩の幻想

エンデに置いている江戸川乱歩は、犯罪小説ではなく、幻想怪奇の作品たちです。
恐ろしさよりも先に、世間から少し外れた場所で生きる感覚が、静かに残る物語。

『人間椅子』には、社会の輪郭からこぼれ落ちながらも、それでも美を求めてしまう人間の姿があります。
異常と呼ばれるその在り方は、どこか純粋で、切実で、世間に馴染めなかった者の美学のようにも見えました。

『白昼夢』では、砂を噛むような感覚で歩く町の風景と、遠くから聞こえてくる子供たちの声が、現実と夢の境界を曖昧にしていきます。
明るい昼の中で見る夢ほど、人は心の奥に触れてしまうのかもしれません。

『火星の運河』には、きらめくような美しさがあります。手の届かないものを想うこと、遠くの世界に心を投げること。それはエンデが大切にしている「遠さ」そのものです。

そして『押絵と旅する男』。一枚の絵に憧れ、現実を離れていくその旅路には、幻想への甘い誘いと、戻れない行く末の影が同時に宿っています。それでも人は、一度見た幻想を、なかったことにはできない。

乱歩の幻想怪奇は、恐怖のために物語ではありません、世界にうまく馴染めなかった人の、孤独と憧れが形を持ったものです。

エンデという場所もまた、現実から少し外れたところで、物語に耳を澄ませるための空間でありたいと思っています。